フィリピン映画界の鬼才ブリランテ・メンドーサ監督最新作『FEAST -狂宴-』より、ブリランテ・メンドーサ監督のオフィシャルインタビューとメイキング写真が解禁!
『ローサは密告された』『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』など、フィリピン社会の暗部をえぐり、社会問題や社会的リアリズムを通してそこで強くたくましく生きる庶民の姿をリアルに描いてきた、社会派監督ブリランテ・メンドーサ監督最新作は、フィリピンの田舎町で巻き起こった交通死亡事故から始まる当事者家族同士の心の機微と赦しをテーマに描く。人はどう罪と向き合い、どう赦し、そして生き直せるのか? しかし、それだけでは終わらないのがメンドーサ監督。ただのハートフルムービーではなく、ストーリーは次々と観るものの予想を裏切る展開を見せ、抒情的な映像の奥で、大きな疑問符をわれわれ観客に突きつける。凝り固まった映画ファンの映画的常識に挑むメンドーサ監督からの挑戦であり、野心作とも言えるだろう。
解禁されたメイキング写真では、メンドーサ監督が交通事故の被害者に血糊を塗る姿や、撮影中のキャストたちの様子が切り取られている。
<以下、ブリランテ・メンドーサ監督オフィシャルインタビューインタビュー>
Qあなたが主人公の立場だったらどうしますか?
本作はいくらか行ったインタビューに基づいているのですが、実際フィリピンではこのようなことがそれなりに頻繁に起きるんです。怖いというのは本能ですよね。留まるべきか、逃げるべきか当然迷うはずです。私が主人公だったら、すぐに助けを呼ぶでしょうね。劇中においては、このような状況で本人はどうしていいかわからず、父親の本能として普通は守ろうとするだろうとリサーチを参考に考えました。
Q父親が金持ちであること、特権階級であることは、父親の行動を左右したと思いますか?
地位よりも、父であることによる本能によって、行動が起こされたのだと考えています。愛する人を守ろうとする本能は、とても父親らしいものです。息子は海外に行く予定があり、妻と別居している。父親として自分の人生を、そんな息子に捧げる。そうすることで息子を守り、逃亡者になったり刑務所に入ったりしないようにしたかったのです。
Q宗教を信じますか?
私は無宗教ですが、スピリチュアルな人間です。フィリピンは東南アジアで唯一のカトリックの国で、80%以上のフィリピン人がカトリック教徒で、とても信心深い。私たちにはこのような伝統があり、聖週間には多くの人々が伝道を実践します。映画の中で描かれていることは全く非日常的ではありません。カトリック教徒ではない人にとっては、 これは何なんだ、なぜ彼らは自分を傷つけるんだ というような疑問を持つかもしれません。でも、これはフィリピンではごく普通の光景なんです。文化や伝統、食べ物だけでなく、制度としての家族、一族のようなものを守り、一緒にいる必要があるという考えを映画に取り入れようとしました。宗教も、私たちの国において非常に重要な要素なのです。フィリピン人の人間性、信念、生き方を世界の他の地域にも見せられたらいいと思ったんです。また、宗教的であることと、実際の生活で実践していることとが対照的であるという皮肉でもあります。
Q映画に登場する2人の母親のキャラクターについて教えてください。
冒頭、加害者の母親の最初の反応は、罪を隠そうと、消し去ろうとします。彼女はとても保護的で、家族に何か悪いことが起こってほしくないのです。それは本能でもあります。もう一人、被害者の母親は貧しいので金銭に解決を見出します。これも本能だと思います。私がやろうとしているのは、宗教的であることと正しいこと、家族を愛することと守ること、これらが対立することの皮肉をいっぺんに表現することです。この映画の登場人物は皆、家族に関して、守るべきもの、優先すべきものを持っています。例えば、父親は、息子を守りたいという本能がある。母親も同様ですが、同時に、正義を貫くという本能も持っている。これらの相互作用を、人物描写や演出よって明るみに出すというのが私の意図です。
Q物語の中で重要な役割を果たしている食べ物についてはどうですか?
お気付きかどうかわかりませんが、フィリピンの中でもこの映画で描かれている地域は違う言葉を話します。パンパンガ州は、食の中心地と言われています。私はそこの出身なんです。私たちはおいしい料理、エキゾチックな料理を作るんですが、それはスペイン人がフィリピンに定住したときに伝わったんです。スペイン人が料理の作り方を教え、地元の人たちはその教えを地元の食材と融合させようとしました。だから、とてもおいしいんです。自分のことだけを考えるのではなく、、他者にも手を差し伸べて問題に対処していくことのメタファーとして、この映画に食のエッセンスを取り入れようとしました。
Qキャスティングについて教えてください。
今までの作品と比べると、今回のキャストはフィリピンでとても有名な俳優ばかりです。父親役のリト・ラピッドは現在上院議員です。上院議員になるまでは、とても有名なアクションスターでした。ココ・マーティンは、『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド- 』、『サービス』、『マニラ・デイドリーム』で主役を演じてもらいました。彼はいまやフィリピンで最も人気のある俳優で、7年ほど続いたテレビシリーズやテレビ番組をこなしています。
ジャクリン・ホセは『ローサは密告された』でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞し、私たちが初めて一緒に仕事をした『マニラ・デイドリーム』では母親役を演じてもらいました。ほとんどの作品はテレビで放映され、テレビではとても人気があります。被害者の妻役の女性もとても人気があります。
Q人気俳優と仕事をするのは簡単ですか?
とても難しい。私がココ・マーティンを発見した15~16年前は、外で撮影することができ、とても楽でしたよ。でも今は、ボディーガードやスケジュール表が必要だし、、野次馬達たちがいて、とても大変です。1マイル先の人たちも彼を知っていて、撮影があろうものなら人々が群がり、コントロールするのが難しくなります。特に私の映画作りではその場の感情を大事にしていて、リハーサルや過度な演出をしたくないので、色々なチャレンジがありました。
Qビジュアル面についても詳しく教えてください。
撮影に関して、この映画では土地の色、風景、伝統、文化、宗教、食べ物、つまり場所そのものを見せたかった。観客に、このコミュニティが実際にどのようなものかをイメージしてもらいたかった。川が流れ、新鮮な魚や食べ物が手に入り、お祭りも盛んなんです。人々は本当に食べ物が好きで、私たちが食べる食べ物や味などについては、地域のコミュニティの中で活発な意見交換が行われています。この映画では、そのすべてを取り入れようとしました。
3月1日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開